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◯筋トレは筋力が鍛えられるだけじゃない
「もう歳やな・・」そう感じている高齢者は、あなただけじゃないですよ!
2016年にアメリカで行われた研究では60歳前後の男女に筋力トレーニングを行わせたところ、10週間で平均7~8%もの筋肉量の増加が確認されたそうです。
実際に東京都健康長寿医療センターで行われたテストでは、90歳以上の超後期の高齢者であっても、筋力の増強効果が確認されています。
身体の弱っていない人ほど、より高い効果が得られていますが、介護老人保健施設に入所されているような環境でも効果があることが分かっています。
たとえ成長期を過ぎていても、還暦を迎えていても、トレーニングをすれば筋肉が増えるので、年齢を理由にあきらめる必要は全くありません。
以下に高齢者が筋トレを始めて、得ることのできるメリットを紹介しておきます。
ぜひ、最後まで読んでいただき参考にしてもらえるとうれしいです。
◯筋トレで運動機能が向上する
歳をとると筋力が衰え自分自身の体重を支えづらくなり、わずかな段差でもつまづいて転倒しやすくなります。
女性はとくに骨量が減って骨密度も低くなるので骨折しやすい傾向にあります。
しかしこれは、何の対策もしなかった場合の話です。
高齢期においても身体に対して適度な刺激を与えてあげることによって、運動機能ばかりでなく生活機能全般の向上も期待できます。
東京都健康長寿医療センターで2001年~2010年の10年間にわたって、中年期からの老化予防をテーマにした様々な追跡研究を行いました。
その結果、4つの特徴があることがわかりました。
◯高齢者の運動機能の特徴
①運動機能は加齢に伴って低下しその低下は65歳を超えてもなお進行する
②運動機能の個人差は年齢が進むにつれて大きくなる
③運動機能は歩行機能を見ると大まかにわかる
④運動機能は将来の生活機能に影響を及ぼす
②③④の項目でわかるのは、運動機能を高めれば将来、健康で自立した生活を送りやすくなるということ。
筋トレを始めとする運動を通して要介護状態になりにくい、負けない体を作りましょう。
◯筋トレはサルコペニアを予防する
「サルコペニア」という言葉をご存知でしょうか?
「サルコペニア」とは筋肉量が減少するという意味で、ギリシャ語の「sarco:肉」「penia:減少」を組み合わせたものです。
筋肉量の減少にともなって、全身の筋力の衰えがあらわれ身体機能全般の低下が起こることをいいます。
筋肉量の減少は、とくにすばやい動きや力強い動きをするときに使われる速筋繊維(白筋)に起こりやすく、高齢者が転倒しやすいのはこの速筋繊維の減少によって、とっさの身のこなしがうまくできないことが原因に挙げられます。
なのでこうした速筋繊維を筋トレによって鍛えることも運動機能の向上にも役立ちます。
関連記事:
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◯筋トレは寝たきり予防に役立つ
日常生活能力を維持するために、あるいは歩行機能を維持するためにはどこの筋肉を鍛えるのが効果的なのでしょうか?
「抗重力筋」とは地球の重力に対抗して正しい姿勢を維持するために使われる筋肉で、
背中(脊柱起立筋)
お腹(腹直筋)
お尻(大臀筋)
太もも前面(大腿四頭筋)
ふくらはぎ(下腿三頭筋)などを指します。
♫カンタンに言うと「背中+下半身」ですね。
これらの筋肉を鍛えることで歩行がスムーズになると同時に、日常生活機能全般がレベルアップします。
◯筋トレはダイエットに役立つ
筋トレを日常生活に取り入れると転倒や老衰予防だけでなく様々な効果が期待できます。
それは老若男女を問いません。
まず筋肉が増えてくることで健康な生活を維持する効果が期待できます。
実感できる効果としては基礎代謝(何もしなくても消費するエネルギー)が向上するので、痩せやすく太りにくい体を作ることができます。
つまりダイエット効果の期待大!
次に筋肉がついて動きやすくなるので、動きが軽快になり活動しやすい体になります。
体力がついて疲れにくくなるので、腰痛や膝痛の改善も実感できることでしょう。
さらに姿勢が良くなるので周囲の人にも、若々しい印象を与えることができます。
便通が良くなったり冷え性が改善されたりといった報告もあります。
男性だけでなく女性にとってもメリットが多いですね。
また筋トレで成長ホルモンが分泌されやすくなるので、不眠が改善されるという副次的な効果もあります。
メンタル面でも運動することで普段のストレスが解消され、日々を前向きに過ごせるといった効果もあります。
加えて筋肉を始めとする体の手入れに関心を持つことで食事や睡眠、ストレスを含めた健康全般への意識が高まることでしょう。
◯筋トレは生活習慣病予防に役立つ
筋トレは目に見えて実感できる健康維持の他にも、生活習慣病の予防、改善などに効果があることが分かっています。
増えた筋肉によってエネルギーが消費されるので、糖尿病や脂質異常症の予防、改善。
さらに筋肉が分泌するホルモンに動脈硬化を防ぐ成分が含まれるので、脳血管疾患や心臓病などの血液循環の不具合で発生する重症な疾患の予防に役立つことも期待できます。
持久力や柔軟性までも向上し、骨密度の保持や増加に効果があるので骨粗しょう症の予防にもなります。
◯筋トレは認知症予防に役立つ
健康で長寿を願っている高齢者の人たちにとって、寝たきりになることと同様に心配なのが認知症ではないでしょうか。
認知症の原因としましては、生活習慣病に関連する糖尿病、高血圧、肥満、運動不足、喫煙、うつなどが考えられています。
それらの原因がアルツハイマー病の発症にどのような影響を与えるのか分析したアメリカのレポートがあります。
アルツハイマー病の危険因子として、最も多いのが「身体的不活動」なんです。
これを見ると中年期の生活習慣病の影響はありますが、中年期以降の身体活動不足がアルツハイマー病を引き起こす最大の要因になっていることが、よ〜くわかりますね。
つまり認知症予防には身体活動を向上させると共に、活動的なライフスタイルを確立することがとても重要であることがわかります。
適度な運動は生活習慣病の予防、改善に役立つことからアルツハイマー病の危険因子である高血圧や糖尿病の発症を防ぐのに有効です。
また運動によって血流がスムーズになるため脳細胞の働きを良くすることがわかっています。
認知症予防に役立つ運動としては、ウォーキングなどの有酸素運動が知られていますが、中程度の筋トレも同様の効果が期待できます。
さらに最近の研究によると、軽度認知障害のある高齢者が有酸素運動と筋トレなどに加えて、脳を刺激する「計算」や「しりとり」などの認知課題を同時に行うと、認知機能や記憶力が向上するのではないかと積極的な研究がなされています。
◯筋トレを始めて2ヶ月辛抱すると楽しくなる
筋トレが体に良い事は知っていても、なかなか始められなかったり、始めても長続きせず1〜2週間で挫折した経験のある人も多いのではないでしょうか。
現役を離れたら自由に使える時間があるのですから筋トレを見直すべきグッドタイミングです。
筋トレを続けられなかった理由を聞くと
「きついから・・」
「退屈だから・・」
「いつのまにか・・」やめていたと言う人が多いようです。
「きついから」「退屈だから」と言った理由は、筋トレの効果が出始めるのに少し時間がかかるからなんです。
少しだけ気長に構えて、筋肉へメッセージを送ってみてください。
よく目安として言われるのは「2ヶ月辛抱すれば楽しくなる」と言うもの。
それは筋トレを始めて体が徐々に引き締まり、体力がついたことが実感できるのがはじめて2ヶ月後くらいだからです。
また「いつの間にかやめていた」と言う人は、なんとなく適当にトレーニングを行うのではなく、1週間で同じ日、同じ時間に行ってみたり買い物に行く前に行う、夕飯のあとに行うなど日常生活の行動とペアにしていると長続きします。
たとえば「食事後の歯磨き」のようにセットにして考えてみるとよいでしょう。
初日からがんばってしまうと、長続きしません。
最初のハードルは低く設定し、徐々にハードルを上げていきましょう。
たとえ5分、10分のウォーキングでもOK!
慣れてくれば30分や40分でもできるようになります。
筋トレを始めて2ヶ月くらい過ぎると、筋肉量が増え体の変化が実感できます。
最も早く感じるのは体の中の活力の復活です。
体力がつくので行動もどんどん積極的になります。
生活活動が拡大し心理的、社会的老化が予防できます。
さらにウォーキングなどと組み合わせることで生活習慣病も改善されます。
姿勢、睡眠、便通などの体の微妙な変化を敏感に感じて、筋トレ効果を楽しんでください。
こうした運動の効果を実感することが長続きさせるための最大の味方になります。
まとめ
筋トレをすると運動機能が向上し快活になる
筋トレをするとサルコペニアの予防になる
抗重力筋を鍛えると寝たきり防止になる
基礎代謝が上がりダイエットに役立つ
筋トレをすると不眠が解消される
筋トレをするとストレス解消になる
筋トレをすると生活習慣病予防になる
筋トレをすると認知症予防になる
筋トレの効果を体感すると継続できる
体が快活になると前向きになれる
挙げだしたらキリがない・・